水墨画における真作の見分け方とポイントまとめ

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水墨画とは水墨画とは墨の濃淡と筆の動きによって描かれた絵のことです。
古くは中国、唐の時代に誕生しました。

日本に伝来したのは、鎌倉時代で、日本においては13世紀末ごろ
本格的な水墨画が誕生します。このころの代表的な画家として、
可翁、黙庵、鉄舟徳済などがいます。その後、水墨画が全盛期を迎えたのは室町時代でした。
明兆、如拙、周文、雪舟、雪村などの水墨画家が有名で、
彼らは多くの弟子を育成しました。

水墨画の魅力は、なんといっても墨のにじみやぼかし、濃淡だけで、
全宇宙を表現できることです。

しかし、その素朴さゆえに粗悪な贋作が非常に多く見受けられるのも確かです。
では、どのように水墨画の真作を見分け、価値の高い作品を手にすることができるでしょうか。

1.贋作ではない「工藝版」

絵画の印刷物の中でも有名なものが、「工藝版」です。
「大塚工藝社」という印刷会社が刷る複製品の印刷物は「工藝版」と呼ばれています。
これは、贋物ということではありません。
色や寸法が非常に忠実に再現され、本物と寸分違わぬような複製品なので、
よく本物と勘違いされることがある代物なのです。
本物には劣りますが、それなりの値打ちがあるもので、もしオリジナルが
一千万円くらいするのであれば、工藝版は十五万円程度の値打ちはあるようです。

印刷だとわかっても、鑑定に出してみると意外に高値が付くことがあるかもしれません。
「工藝版」は如拙や雪舟など、歴史上に名が残るような名品をそのままに
コピーしてるので、名画の作風に触れるという観点で、楽しむのも
一つの手だと言えます。
しかし、「工藝版」のようにきちんとした印刷版もある中、
ただ金儲けのためだけに作られた粗悪な印刷版も多く見受けられ、
しかもとても精巧に作られているので、真作か、工藝版か、贋作か見分けるのが
非常に難しい場合があります。

2.印刷版とオリジナルの見分け方

見分けるポイントは3つあります。

  • 1つ目は印刷のインクの粒子が見えるか
  • 2つ目に絵の表面に触れるとつるっとしているか
  • 3つ目に顔料インクのにおいがしないか

の3点が印刷とオリジナルを見分けるためのポイントになります。

どうすれば、確認することができるでしょうか。
ルーペや虫眼鏡でよく目を凝らして眺めると印刷のインクの粒子が見えることがあります。

また、印刷版は本物は表面の隅に凹凸がありますが、
コピー版は表面を撫でると墨の盛り上がりがなくつるっとしています。

さらに、においをかぐと顔料インクのにおいがします。
買おうか迷う場合五感を駆使してこの三点を必ず確かめましょう。

3.水墨画の落款には要注意

落款とは、作者の作品であることを示す印のことです。
「落」は作品中に署名を行い、印章を押すことで、「款」は「まこと」という意味です。
署名と押印は、通常だと、作品の右か左の隅になされることがあります。

しかし、上部や中間の例も見受けられます。
印章は署名に伴って押されますが、それとは別に、画面の端の随所に押されるのが、
東洋画の特色の一つです。

その場合、名前ではなく美辞麗句が刻まれていて、装飾的な役割を果たしています。
しかし、時代によってその内実ともに変化しているため、一概には言えません。
右上に押されたものを「冠帽印(かんぼういん)」といい、
下に押されたものを「遊印(ゆういん)」といいます。

作者を証明できる落款がある作品は、非常に高い価値があります。
厄介なのは、落款が偽造されている場合です。そのうちの大部分は、
作品そのものが贋作です。

しかし、まれに、無落款だった本物の作品に、後から偽造の署名と印章が
入れられている事例も見られます。その理由を知るには、
江戸初期にまで時代をさかのぼる必要があります。

数多くの印章のない絵画作品が、幕府や大名の間で取引されるようになりました。
その際に、印章のない絵画の鑑定を行った人々は、鑑定の確認の目的で、
作品の中に後署名や後印をいれました。

不景気が世を襲った江戸時代後期には、財政状況が悪化した幕府や各藩から、
大量の絵画が出回るようになりました。

その際に、印章がない作品は鑑定されなかった作品として取引できなくなり、
いまだに印章がない作品には、鑑定確認印として、すべて後印を
押さなければならなくなりました。

後印を押すときに参考にされた「本朝画印」という書物の中には、
直接手写しされた正確な印章から、伝聞情報に基づいて書かれた信憑性が
低い印章まで載せられており、必ずしもすべてが正確な印章だとは言えません。

さらに、印章はいつ、だれが押したのかを確認できるものではないため、
印章のみでの作品の真偽を見分けることは非常に困難です。

これは水墨画に限ったことではありませんが、明治期には多くの贋作が作られ、
さらに混乱を招く事態へと発展しました。

江戸時代より前の水墨画において、印章による正印鑑定を行い、
正印のある作品が本物だとする鑑定方法を用いる際には要注意です。

鑑定士の判断にゆだねましょう。

4.雪舟の作品を正筆と見抜く2つのポイント

画風を知り正筆と見抜く印章だけでは真作かわからないとき、
画家の作風を知り特徴を掴むことは非常に大切になってきます。
その一例として、雪舟の作品を上げてみます。

雪舟の作品を正筆と見抜くポイントは、二つあります。
一つ目は人物画の「眼」です。

雪舟は、高度化されたゴマ粒のような点眼画法で、人物の目をしっかりと描きます。
拙宗等揚(せっしゅうとうよう)と名乗っていた時代にはすでに、
彼が師として仰ぐ如拙や周文の点眼画法を習得しており、雪舟等揚と改名した
1464年以降の人物画にも、それがしっかりと表れています。

点眼画法に関していえば「拙宗等揚」の名で活躍していた時も、
「雪舟等揚」と名を変えたのちもあまり変わりがないのですが、
「拙宗等揚と雪舟等揚は別人である」と言わしめる大きな違いが存在します。

これが、雪舟作品を正筆と見抜くポイントの二つ目で、「筆のスピード感」です。

拙宗等揚の時代、如拙や周文を模倣するような作品が多く、
その結果として筆の速度が遅くなりがちです。

静的な画面となるため、見るものに平面的な印象を与えるのです。
その後、禅僧の画家として渡った中国で、限られた滞在時間の中、
風景や実物を描くうちに筆の速度が速くなり、模倣的画法を脱し、画面を動的で、
ダイナミックなものとしました。

その結果、生き生きとした雪舟の作品が完成したのです。
筆のスピード感は、点眼画法がない雪舟の絵を鑑定する際に、非常に大切になってきます。

5.水墨画における真作の見分け方まとめ

水墨画は「広がりを描く」といわれます。それぞれの作者の目から頭へと風景が入り、
描く人の理想や感覚によって再構築され、描かれます。

ですので、このように、それぞれの作者の作品を鑑定するキーワードを押さえたうえで、
耳で選ばずに目で選びましょう。

美しい水墨画を末永く楽しむために、心の目で見て、さらに自分の感性を信じて
購入あるいは売却を考えましょう。